「海亀のスープ」



雑誌の女性記者は、画家の彼の取材を、 あるレストランで行った。

本日のメニューは、「海亀のスープ」。

彼は、何十年ぶりにそれを口にするらしく楽しみにしていたという。

ところが一口すすると、彼は青ざめた。

「これは本当に海亀のスープかね‥?  違う…違うよ、これは海亀のスープじゃない‥‥」

そう言うと震えながら席を立ち、そのまま去ってしまった。


翌日、彼は自殺した。


記者の彼女はこの事件の謎を追う。

彼の葬儀の日、見覚えのある男を見つける。 確かあの日、あのレストランにいた男だ。

男が、彼が自殺したことに何か関わっていると察し、 彼女は歩き去る男の後を追う。

だが男は何も言いたがらない。


「じゃあ、Yes/Noでいいから質問に答えて。」

「自殺した彼とは面識があるわね?」

「YES」

「じゃ、女関係?」

「NO」

「あなたと彼の関係は‥。同僚?」

「・・・そうです。

・・・私達は、船乗りでした。 あるとき嵐で遭難し、食糧も底をついた。

私はまだ比較的元気だったが、彼は非常に衰弱し、意識も朦朧としてきていた。

そこで私は彼を助けるため、「海亀のスープ」を作り、  彼に与えた。」

「じゃあどうしてスープを飲んだだけで‥まさか!!」

「‥・・」

「‥乗っていたのは、あなたたち二人だけじゃなかった‥!?」

「‥‥YES‥」

「‥私は、彼の命を救うために必死だった。何としてでもそれを飲ませなければならなかった。

運命は皮肉です。その次の日、私達は救助隊に発見されました。」



彼は、あのときの「海亀のスープ」の味を覚えていたのだ。 何十年ぶりかにレストランで口にした「海亀のスープ」の味は、 あのときの味ではなかった。



この話は、実際の事件とかかわりがあるようです。「ひかりごけ事件」などを筆頭に、外国などでもいろいろとあるようです。

私は実際、なにかのテレビ番組でその事件についてを知りました。

乗員が3人いて、このままでは三人とも死んでしまうから、誰かひとりが犠牲にならざるを得ない、と。そういった感じでしたね。

今では船や救助隊などが進歩していますし、ほとんどそんな状況にはならないでしょう。

しかし、こういった状況にならないともいえないのですが・・・。