動かない赤ちゃん



ある夫婦が小さな子供を連れて海外旅行に出かけた時の事だ。

彼らは現地で車を借りて旅行を楽しんでいた。

ところが、あるショッピングセンターでほんの少しの間だけ赤ちゃんを車に残して買い物をしていると、その隙に赤ちゃんが消えてしまったのだ。

彼らは日本大使館や現地警察に要請をして必至に子供を捜したのだが、結局子供は見つからなかった。


・・・それから数日後、やはり同じような小さな子供を連れた若い別の夫婦が、海外より帰国する便に乗っていた。

赤ちゃんは父親に抱かれてぐっすり眠っているようでピクリとも動かない。

フライト中、夫婦の横をたまたま客室乗務員が通りかかった時のこと、飛行機がエアポケットに入り突然機体が大きくゆれた。

そのため乗務員は手に持っていた雑誌を飛ばしてしまい、寝ている赤ちゃんの頭にぶつけてしまう。

「申し訳ございません」

彼女は夫婦に謝りながら赤ちゃんの様子を見てギョッとした。

赤ちゃんは雑誌が当たったためか首が辺な方向に傾いていたのだが、その状態でもまだ目を覚ましていないようでまったく動かないのだ。

父親は赤ちゃんを抱きなおすと

「いいんだ。それより子供が寝てるのでそっとしておいてくれないか」

と言い、慌てた様子で彼女を追い払おうとした。

彼女は赤ちゃんを気遣って様子を見ようとしたのだが、父親がそうさせてはくれない。

おかしな気配を感じた彼女は機長に事の次第を報告、夫婦は空港につくと別室に連れて行かれ取調べを受けた。

係官が赤ちゃんを調べると赤ちゃんは首筋から腹部にかけてを切り裂かれて死んでおり、体からは内臓が抜き取られて代わりに大量の麻薬が詰め込まれていたという。

もちろん、この赤ちゃんこそが初めの夫婦の行方不明の子供だったのだ。




麻薬の密輸にまつわる恐ろしい伝説です。

都市伝説では赤ちゃんはだいたいが酷い目に合う役割を担いますが、
ここでもそれは例外ではなく、殺された上に麻薬密輸のためのカモフラージュとして利用されます。

この話は国際的な旅する伝説であり実話として語られる事も多く、
あの「ワシントンポスト」紙に事件記事として掲載された事もあるほどです(その5日後には同紙に『この話は実証出来なかった』という訂正記事が載りました)。