サッちゃん



誰もが知っている童謡「サッちゃん」。

では、この歌の2番、3番の歌詞を皆さんはご存知だろうか?

2番の歌詞は「サッちゃんはバナナが大好きだけど半分しか食べられなくて可哀想」

という内容で、3番は「サッちゃんが遠くへ行ってしまって寂しい」というもの。

なぜ半分しか食べられないのか、なぜ遠くに行ってしまったのか・・・

不思議な歌詞だと疑問に思われないだろうか?


実はこの曲は、「さちこ」という実在した少女にささげられた曲。

この「サッちゃん」はバナナを食べながら歩いている時に交通事故に遭い死んでしまった。

だからサッちゃんは「バナナを半分しか食べられなくて可哀想」

なのであり、「遠くへ行ってしまった」というわけだ。

さて、ここまでこの話を読んでしまった方には一つ忠告しなければならないことがある。

「サッちゃん」はとても寂しがりやなので、この歌の本当の意味を知ってしまった人がいると夜中にその人の枕もとに現れ、

その人を仲間にするためにあの世へ連れて行ってしまうのだ。

ただし、「サッちゃん」の大好物であるバナナを書いた絵を用意し、これを枕の下に敷いておけば大丈夫。

「サッちゃん」はその絵に気を取られてしまうため、あなたが連れ去られることはない。

しかし、もしこのバナナの絵の用意を怠れば、あなたは今夜・・・



サッちゃんは今夜現れるのだそうです。

グズグズしている時間はありません。手早く検証に移りましょう。

まずは「サッちゃん」の2番、3番の歌詞をご覧下さい。

「サッちゃんはね バナナが大好きほんとだよ

だけどちっちゃいから バナナを半分しか食べられないのかわいそうね サッちゃん


サッちゃんがね 遠くへ行っちゃうってほんとかな

だけどちっちゃいから ぼくのこと忘れてしまうだろさびしいな サッちゃん」


まずは2番に注目。

確かに「バナナを半分しか食べられなくて可哀想」という内容の歌詞ですが、

その理由は「ちっちゃいから」とサッちゃんの成長状態に原因があることがはっきりと述べられています。

また、3番も「サッちゃんが遠くへ行ってしまって寂しい」というものですが、「ぼくのこと忘れてしまうだろ」うから寂しいのだと述べられており、

これは死んだ子供を悼む歌としては妙な歌詞だといわざるを得ません。

さらにおかしいのは「遠くへ行っちゃうってほんとかな」の部分。

・・・なぜ疑問形なのでしょうか?

やはりこれは「サッちゃんが引っ越してしまう(らしい)ので寂しい」と素直に解釈するべきでしょう。

実はサッちゃんにモデルがいるというのは本当なのですが、

作詞者の阪田寛夫によるとそれは幼稚園のときに一つ上のクラスにいて、

いつのまにか引っ越していなくなってしまった「サッちゃん」というあだ名の少女なのだとか…

かくして、またしても我々は趣味の悪い作り話に付き合わされていたことが証明されたわけです。

ここで解説を終えてしまっても良いのですが、ついでなのでもう少しこの話に付き合うことにしましょう。

都市伝説や現代妖怪には「その話を聞いた人のところへ現れる」といった構図を持つものが多くあります。

私はこのような構図をもつ伝説を、この手の話の代表である「カシマさん」

から名前を取って「カシマ系伝説」とか「カシマ系妖怪」と呼ぶことにしているのですが、

今回ご紹介した「サッちゃん」も明かにこの「カシマ系伝説」の流れをくんでいます。

特にそれがはっきり出ているのがチェーンメールで広まった有名なバージョンで、そこではさっちゃんは踏み切り事故で下半身を失って死んだため、

話を聞いた人のもとに現れて足を切り取り持ち去ってしまうのだとされています。

「聞いた人のもとに現れる」うえに「足を切り取り持ち去る」となれば、これはもうどこに出しても恥ずかしくない立派なカシマさんです。

都市伝説としての「サッちゃん」はカシマさん伝説の変種の一つであると考えて良いでしょう。

なお、この時サッちゃんが遭ったという踏み切り事故の状況は「助けて・・・」

という都市伝説の状況と酷似しています。

どうやらチェーンメール版サッちゃんは、カシマさんとこの踏み切り事故伝説を合成しただけのもののようです。